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パーソナルジムの解約金に効く条文がある

公開

契約書に「途中解約の場合は残額の全額をお支払いいただきます」と書かれていることがあります。署名した以上は払うしかないのか、という話になります。

特定商取引法49条の中途解約の上限は、期間が1か月を超え金額が5万円を超える契約にしか効きません。線の外にある契約にも、別の条文が用意されています

平均的な損害を超える部分は無効

消費者契約法9条1項1号です。

当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分

無効になるのは条項の全部ではなく「当該超える部分」です。平均的な損害の額までは有効で、それを超えた分だけが落ちる形になります。

基準は「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」です。その店にその日いくらの損が出たか、ではなく、同じ種類の契約で通常生じる額を見ることになります。

「解除の事由、時期等の区分に応じ」も入っています。開始前と開始後、通う前と通ったあとで額が違うのは、この区分にあたります。

特定商取引法49条

  • 1か月を超え5万円を超える契約だけ
  • 上限額が政令に数字で書かれている
  • 超える部分の請求ができない

消費者契約法9条1項1号

  • 消費者契約であれば効く
  • 上限は平均的な損害の額
  • 超える部分の条項が無効になる

効く契約の範囲と、上限の決まり方が違う

上限を決めている条文が2本ある(特定商取引法49条・消費者契約法9条1項1号)

数字で書かれているかどうかが、いちばん大きな違いです。特定商取引法のほうは政令を見れば額が出ますが、平均的な損害の額は条文を読んでも出てきません。

どちらが先に効くかは、11条2項が決めている

両方が当たる契約もあります。そのときの順序は消費者契約法11条2項です。

消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

特定商取引法49条の上限額が、ここでいう「別段の定め」にあたります。1か月と5万円の線を超えている契約では49条の上限が先に効き、線の外にある契約で消費者契約法9条1項1号を見るという順になります。

数字が決まっているぶん、49条が当たるほうが読者にとっては読みやすい形です。

算定の根拠を説明する努力義務がある

そこで効いてくるのが同条2項です。

事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(第十二条の四において「算定根拠」という。)の概要を説明するよう努めなければならない。

「当該消費者から説明を求められたときは」なので、こちらが求めることが前提になっています。求めなければ説明は出てきません。

努力義務なので、説明しなかったことに罰則はありません。それでも、求めた記録と、返ってきた説明の中身は残ります。額が争いになったときの材料になります。

契約する前にも、情報を出す努力義務がある

3条1項4号は、契約する前の段階を受けています。

消費者の求めに応じて、消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供すること。

これも求めに応じる形です。申し込む前に「途中でやめるときの条件を教えてください」と聞くのは、この条文が想定している場面になります。

解除させない条項は、そもそも無効

8条の2です。

事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ、又は当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、無効とする。

事業者が約束を果たさなかったときの解除権を放棄させる条項が対象です。事業者に解除の可否を決めさせる条項も、同じく無効とされています。「当社が認めた場合に限り解約できます」という書き方は、ここに触れうる形です。

同じ8条には、金を返す側ではなく賠償する側の条項を無効にする規定も並んでいます。規約の「一切の責任を負いません」がそれで、パーソナルジムで怪我をしたときの責任に分けて書きました。

解除に伴う額ではなく、契約を続けたまま払う額に効くのは10条のほうです。休会中の会費がそこに当たるかはジムの休会は契約を止めていないで見ています。

引き落としが遅れたときの上限は、数字で書かれている

同じ9条1項には2号があり、こちらは数字が条文に入っています。

当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの当該超える部分

年十四・六パーセントが上限で、超える部分が無効になります。月会費の引き落としが残高不足で止まったときの遅延損害金は、ここで測れます。

計算の起点は「支払期日の翌日」で、日数に応じて計算します。既に払った分があれば、それを引いた額に率を掛けます。一律の「延滞手数料」が定額で決まっている場合は、日数で計算した額と比べることになります。

自動更新の条項は、10条で見る

もう1つ、契約が続いていく側の条文があります。10条です。

消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

「消費者の不作為をもって」承諾とみなす条項が、条文の冒頭に挙がっています。何も言わなければ更新される形の条項がこれにあたります。

ただし、そこに挙がっているだけで無効になるわけではありません。条文の後半に「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」という要件が続いています。自動更新の条項があること自体と、それが無効になることは別です。

読む側としては、更新の何日前までに申し出るのか、その申し出をどこへ出すのかを契約書で確かめるのが先になります。

求めるときの順番

  1. 契約書の解約の条項を読み、額と区分を書き出す
  2. 事業者に算定根拠の概要の説明を求める。日付が残る形で
  3. 説明された額と、契約書の額を比べる
  4. 開きがあるなら、消費者ホットライン 188 に契約書と説明の記録を持って相談する

1か月と5万円の線を超えている契約なら、そもそも政令の上限が先に効きます。線の数え方はパーソナルジムのクーリングオフ条件、上限額はパーソナルジムの中途解約と請求できる額の上限にあります。

まとめ

  • 消費者契約法9条1項1号は、平均的な損害の額を超える部分を無効にする
  • 11条2項により、特定商取引法49条の上限が当たる契約ではそちらが先に効く
  • 無効になるのは条項の全部ではなく、超える部分だけ
  • 同条2項は、消費者から求められたときに算定根拠の概要を説明する努力義務を置いている
  • 3条1項4号は、契約前に解除権の行使に必要な情報を提供する努力義務を置いている
  • 9条1項2号は、支払いが遅れたときの遅延損害金を年十四・六パーセントで区切っている
  • 8条の2により、事業者の債務不履行による解除権を放棄させる条項は無効

出典