パーソナルジムの行政処分は公表される
店を比べるとき、料金と設備は公式サイトで見られます。過去に行政の処分を受けているかどうかは、そこには出てきません。
特定継続的役務提供(1か月を超えて続き、5万円を超える契約だけが対象になる決まり)の章には、処分を公表させる規定が置かれています。探しに行けば見られる、ということになります。
指示の対象になる行為
特定商取引法46条1項が、主務大臣の指示を定めています。42条から45条までの違反に加えて、同項の各号に並ぶ行為も対象です。1号がこれです。
一特定継続的役務提供等契約に基づく債務又は特定継続的役務提供等契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。
「解除によつて生ずる債務」が入っています。やめたときに返す金を払わない、あるいは遅らせる行為がここに当たります。
3号は解除を妨げる場面です。
三特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、当該特定継続的役務提供等契約に関する事項であつて、特定継続的役務提供受領者等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げないこと。
2号が、取消しの外側を拾う
読むと効くのが2号です。
二特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、当該特定継続的役務提供等契約に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(第四十四条第一項第一号から第六号までに掲げるものを除く。)につき、故意に事実を告げないこと。
括弧が「第四十四条第一項第一号から第六号までに掲げるものを除く」です。44条2項の不告知が名指ししているのが1号から6号までなので、2号はその外側を受けていることになります。
つまり、7号の「締結を必要とする事情」について黙っていた場合、44条2項には当たらず、49条の2で取り消すこともできません。それでも46条1項2号の対象にはなります。取り消せる範囲と、行政が動ける範囲は同じではありません。
取消しのほうの範囲はパーソナルジムの勧誘で話が違ったときにまとめました。
指示も命令も公表される
46条2項です。
主務大臣は、前項の規定による指示をしたときは、その旨を公表しなければならない。
行政が取る手段条文が置いていること
- 指示(46条1項)同条2項が公表を義務づけている違反や各号の行為があり、利益が害されるおそれがあると認めるとき
- 業務の停止(47条1項)同条3項が公表を義務づけている二年以内の期間を限り、業務の全部または一部を停止すべきことを命ずる
- 役員等への業務の禁止(47条の2第1項)同条3項が公表を義務づけている停止を命ずる期間と同一の期間、業務を新たに開始することを禁じる
「公表しなければならない」なので、処分があれば外から見える形になります。会社名だけでなく、47条の2による禁止では個人も対象です。
事業者を調べるときに見る場所
条文が公表を義務づけている以上、探す先は行政の側です。
- 消費者庁が公表している行政処分の一覧
- 都道府県が公表しているもの。特定商取引法の処分は都道府県知事が行うこともある
- 事業者名と、代表者の名前の両方で引く
3番目が抜けやすいところです。47条の2は役員や使用人を対象にしていて、社名が変わっても人は残ります。
見つからなかった場合、それは「処分を受けていない」ではなく「探した範囲では見つからなかった」までです。公表の期間や掲載の形は行政の側で決まります。
そもそも章が当たらない契約がある
ここまでは、特定継続的役務提供の章が当たる契約の話です。50条が、その章から外れる契約を並べています。ジムやサロンで関わってくるのは一号と五号です。
50条一号です。
一特定継続的役務提供等契約で、特定継続的役務提供受領者等が営業のために又は営業として締結するものに係る特定継続的役務提供
自分の仕事のために契約した場合がここに入ります。インストラクターやモデルが職業上の必要から通うようなときです。
同じ条の五号です。
五事業者がその従業者に対して行う特定継続的役務提供
勤め先が自社の社員向けに運営しているジムがこれにあたります。外れるのは章の全部なので、概要書面もクーリング・オフも中途解約の上限額も、この章の行政処分も適用されません。概要書面は、契約する前に渡される、料金と解約の条件を書いた書面のことです。
読者の側から見ると、料金を会社が払っているのか自分が払っているのかだけでは決まりません。誰と誰の契約なのかで分かれます。会社が法人契約をして社員が使う形と、社員が個人でジムと契約して会社が補助を出す形は、条文の上で別のものです。
処分と、こちらが使える権利は別
行政の処分は、読者が受けた損害を直接取り戻す仕組みではありません。指示や停止が出ても、払った金がその手続きで返ってくるわけではないということです。
返る額のほうは中途解約の上限にあり、そちらはパーソナルジムの中途解約と請求できる額の上限にまとめました。両方を別に見ることになります。
比べる段階でできるのは、処分の有無を材料の一つに加えるところまでです。料金の比べ方はパーソナルジムの料金と相場の見方にあります。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 46条1項は42条から45条までの違反と、同項各号の行為を指示の対象にしている
- 1号は「解除によつて生ずる債務」の履行拒否や不当な遅延
- 2号は44条1項1号から6号までを除いた範囲の不告知で、取消しの対象外でも当たりうる
- 46条2項・47条3項・47条の2第3項が、いずれも公表を義務づけている
- 47条の2は役員や使用人も対象なので、社名ではなく人でも引く
- 50条一号と五号に当たる契約は、この章そのものが適用されない