パーソナルジムの分割払いは道が増える
回数券やコースを申し込むとき、支払い方法を選ぶ場面があります。一括で振り込む、クレジットカードで分割にする、店が案内する信販会社のクレジットを組む。
選んだ方法によって、店が止まったときにできることが変わります。金額が同じでも同じにはなりません。
クレジットなら、事業者への事由を会社に向けられる
割賦販売法30条の4第1項です。カードの分割払いなど、包括信用購入あっせんが対象です。
購入者又は役務の提供を受ける者は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。
長いので、要点だけ取り出します。役務を提供する事業者に対して生じている事由をもって、支払いを請求してくるクレジット会社に対抗できるという構造です。
店が閉まって施術が受けられなくなった、という事情は店に対して生じた事由です。それをクレジット会社への支払いの場面で使えることになります。
同条2項があります。
前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。
契約書に「クレジット会社への支払いは止められません」と書かれていても、その特約のほうが無効になる形です。
店が案内するクレジットにも、同じ条文がある
信販会社と個別に組むクレジットは、包括ではなく個別信用購入あっせんです。こちらは35条の3の19第1項が同じ仕組みを置いていて、2項も同じく不利な特約を無効としています。
どちらの形でも、事業者に生じている事由を支払いの場面で使えます。違うのは条番号のほうです。
四万円の下限がある
読み落とすと困るのが、それぞれの4項です。抗弁の規定を、政令で定める金額に満たない支払総額には適用しないとしています。その政令が割賦販売法施行令です。
包括のほうは21条1項です。
法第三十条の四第四項の政令で定める金額は、四万円とする。
個別のほうは26条です。
法第三十五条の三の十九第四項の政令で定める金額は、四万円とする。
支払総額が四万円に満たない契約では、この抗弁が使えません。回数券の額が小さい場合はここに当たります。なお施行令21条2項は、リボルビング方式について三万八千円と定めています。
どう払ったか止まったときに使える道
- 現金や振込で一括前払い事業者に直接請求する割賦販売法の抗弁は出てこない。相手に払う能力がなければ回収は難しい
- カードの分割払い(包括)30条の4第1項で支払いの請求に対抗できる支払総額が四万円に満たないものは施行令21条1項により対象外
- 店が案内する信販会社のクレジット(個別)35条の3の19第1項で同じく対抗できる四万円の下限は施行令26条。呼ばれ方によっては、クレジット契約の側も8日で撤回できる
クレジット契約の側を外せる場合がある
もう1つ、個別信用購入あっせんにだけ置かれている規定があります。35条の3の10は、クレジット契約そのものの申込みの撤回等を認めています。期間は書面を受領した日から起算して8日です。
ただし、どんな契約でも使えるわけではありません。同条が挙げているのは6つの場合で、営業所等以外の場所で申込みを受けた場合、営業所等で特定顧客から申込みを受けた場合、電話勧誘顧客から郵便等で申込みを受けた場合と、それぞれについて契約を締結した場合です。
店を自分で調べて予約し、店舗で申し込んだ契約はここに入っていません。呼ばれ方が分かれ目になるところは役務の側と同じで、無料体験の勧誘は訪問販売になることがあるにまとめました。
同条のただし書きには、撤回等を妨げるために不実のことを告げられた場合や威迫されて困惑した場合に、改めて書面を受け取った日から8日を数え直す仕組みも置かれています。
役務の側の8日はパーソナルジムのクーリングオフ条件にまとめました。
対抗するときは、書面を出すことになる
抗弁は「言えば止まる」ものではありません。30条の4第3項です。
第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は、その対抗を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。
クレジット会社から求められたら、事由の内容を書いた書面を出す努力義務があります。個別のほうも35条の3の19第3項が同じ形です。
書くのは、いつからサービスが受けられなくなったか、店に連絡した日と結果、契約の内容といったところです。連絡した記録が残っていないと、この書面が書けません。
支払方法の欄を見れば、どちらの条文かが分かる
自分の契約がどちら側かは、特定商取引法に基づく表記の支払方法の欄で見当が付きます。カードの番号を渡すだけならカードのほう、申込書を書いて審査を待つなら店が案内するクレジットのほうです。
このサイトが載せている MIYAZAKI GYM は、支払方法として「クレジットカード/銀行振込/分割払い(提携信販)」を並べています。分割払いには「提携信販の審査・条件に基づく」という注記が付き、商品代金以外の必要料金の欄にも「分割払い手数料(提携信販会社所定)」が挙げられています。信販会社の審査が入る形なので、この分割払いは35条の3の19の側になります。
同じページにはコースの価格が税込で並んでいて、いちばん短い8回のコースでも96,800円です。四万円の下限は越えるので、抗弁が使えない側には落ちません。
信販会社が出てこない分割払いもある
ここまでの条文は、どちらもクレジット会社が間に入っていることを前提にしています。間に誰もいなければ、対抗する相手もいません。
このサイトが載せている ACCEPT(銀座)は、よくある質問で現金・銀行振込・クレジットカードのそれぞれに一括と分割があるとしていて、料金の注記は分割払いが最大3分割までとしています。信販会社の名前は出てきません。
カードの分割を選べば30条の4の側です。現金や銀行振込を3回に分ける形は、事業者と直接の取り決めになります。クレジット会社が間にいないので、30条の4も35条の3の19も当たりません。やめたいときに出せるのは、特定商取引法49条の中途解約のほうになります。
同じ店で同じ金額を払っても、払い方で使える条文が変わります。支払方法の欄を見るのは、そこを分けるためです。
申し込む前に決めておくこと
- 支払総額が四万円を超えるか。超えないなら抗弁は使えない
- カードの分割か、店が案内するクレジットか。条番号が変わる
- 一括前払いを求められた場合、前受金の保全措置があるか
3つ目は特定商取引法45条の側の話で、パーソナルジムの前払いと事業者の書類にまとめました。やめたときに返る額の計算はパーソナルジムの中途解約と請求できる額の上限にあります。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 30条の4第1項は、事業者に生じている事由をもってクレジット会社に対抗できるとしている
- 同条2項により、これに反する不利な特約は無効
- 個別クレジットは35条の3の19が同じ仕組みを置いている
- 施行令21条1項と26条が四万円の下限を定めていて、それ未満は対象外
- 35条の3の10のクレジット契約の撤回は、営業所等以外・特定顧客・電話勧誘の6つの場合に限られる
- 30条の4第3項により、対抗するときは事由を書いた書面の提出を求められる